インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史の言う通り、最初の段階で『無理だ』とか『やめとけ』と言われていたら、私はきっと聞く耳をもたなかっただろうし、『俺と結婚しよう』と言われても、尚史は家族同然だから無理だと答えていたんじゃないかと思う。

尚史はやっぱり私の性格をよくわかっているんだなと感心する。

「尚史は前からモモのことが好きだったみたいだし、モモも尚史とならと思ったから結婚したわけだろ?結婚までの流れが普通とはちょっと違ったけど、二人が納得してるんならそれでいいんじゃないか?」

父がそう言うと、尚史は少し照れくさそうに笑ってうなずいた。


そのあと両親と一緒に夕飯を食べることになった。

私は実家を出る前に母から少しでも料理を教わろうと、母と一緒にキッチンに立った。

いつもはキッチンに立っても、用意してもらった料理をよそうとか、お湯を沸かすくらいしかしない。

自ら料理をしようと思ったのは、27歳にして初めてだ。

「モモ、お米の研ぎ方くらいはわかるわよね?」

「家庭科で習ったから、一応は……」

「じゃあお米研いで。今日は尚史くんがいるから4合くらいかな」

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