インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
甘える尚史の可愛さに負けて、もうひとつチョコを手に取り尚史の口に運ぶと、尚史は私の指までパクっとくわえ込んだ。

それと同時に店のドアが開き、新しい客が入ってきた。

尚史はそれを気にも留めず、口の中で私の指先に舌を絡める。

指先を撫でる尚史の柔らかい舌が、私の体の奥になんともいえない不思議なうずきを与える。

こんなところでいきなり何を考えているんだ?!

尚史には人前で卑猥なプレイをするアブノーマルな趣味があったのか?!

だけど私は至ってノーマルだから、さすがにこれを誰かに見られるのは恥ずかしい。

「ちょっと尚史……!」

あわてて尚史の口から指を引き抜こうとしていると、すぐそばで私たちをじーっと見ている人がいることに気付いた。

いい歳してところかまわずイチャついてるバカップルがいるなと思ったとしても、普通そんな至近距離でガン見する?!

尚史の唾液と溶けたチョコでベトベトになった指をおしぼりで拭きながら、ひきつった顔をゆっくりそちらに向けると、物珍しそうに私と尚史を眺める谷口さんがいた。

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