インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「た……谷口さん……」

「すっごいラブラブですねぇ~」

「いや……これはその……」

よりによってこんなところを会社の後輩に、しかも谷口さんに見られてしまうなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎる!

尚史め……!

『あとで覚えてろよ』はこっちの台詞だ!

「ここでモモ先輩と会うのは初めてですねぇ」

「ああ……うん、そうだね。しばらく顔出してなかったから」

「その間に私もこの店のゲーマーさんたちのお仲間に入れてもらったんですよ。最近はほぼ毎日通ってます」

「そうらしいね。谷口さんがゲーマーだっていうのは意外だったからビックリしたけど」

当たり障りのない会話をしながら様子を窺っていると、谷口さんは私の隣の席に座った。

尚史の隣じゃなかったことにホッとするあたり、私は尚史のこととなると本当に嫉妬深くて心が狭いんだなと自分に呆れる。

「うちの兄が中森さんと友達なんですよ。あっ、中森さんから聞いてますよね」

「うん、聞いてるよ。尚史とキヨと同じ高校だったらしいね」

「兄は高校卒業後は名古屋の大学に進学して、そのままあちらで就職したんです。最近転勤になってこちらに戻ってきたので、中森さんたちと会ったのは久しぶりらしいですけど、また昔みたいに仲良くしてもらって喜んでます。今日ももうすぐ来ると思うんですけど」

「そうなんだ。兄妹仲良しでいいね」

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