インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
谷口さんは尚史のことで特に探りを入れる様子もなく、至って普通の会話が続いた。

もう尚史のことはあきらめたのかな?

もしかしたらすでに告白して断られたとか?

気にはなるけれど、私の方からそれを聞き出すのはためらわれる。

本人が何も言わないなら、そこには触れずにいた方がいいのかも。

谷口さんと話していると、キヨがオムライスを運んできた。

オムライスはやっぱりこれだよね。

久しぶりのキヨのオムライスを食べ始めると、谷口さんが「そういえば」と言った。

「あの店、行きました?オムライスの専門店」

あえて触れないでおこうと思っていたことを切り出され、私はあやうく口の中のオムライスを喉に詰めそうになり、あわてて水で流し込んだ。

行くには行ったけど、私は谷口さんのオススメのオムライスは食べなかったし、他の店には入ろうともせず尚史にキレてしまったから、なんと答えようかと悩む。

「行くには行ったんだけど……」

体調が悪くて谷口さんのオススメは食べられなかったと言おうとすると、尚史が「行ったけど」と横から口をはさんだ。

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