インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「すげぇ行列だったし腹減ってたから、他の店で飯食った。いろいろ忙しくてケーキの店もまだ行ってない」

「そうなんですか?ホントに美味しいんで、ぜひ行ってみてください!」

「落ち着いたらまた行くよ。それと指輪は二人の好みに合うのがあの店にはなかったから、他の店で買った。せっかく教えてもらったのにごめんな」

尚史は谷口さんが気を悪くしないように気を遣って、そんな風に言ったんだと思う。

そして私が何も言わなくてもいいように、先回りしてかばってくれたことが嬉しかった。

「いいんですよー、中森さんがモモ先輩のこと大好きなのはよくわかってますから、そんなの気にしないでください。お二人が気に入った指輪を選ぶのが一番ですよ!」

谷口さんからそんなことを言わるとは思わなかったし、面と向かって言われると照れくさい。

私のいないところで尚史がどんなことを言っていたのかが気になる。

「大好きって、そんな……」

「だって中森さん、『モモが』とか『モモに』とか言って、とにかくいつでもモモ先輩のことばっかり考えてるんですもん」

「……そうなの?」

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