インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
だけど私はこの騒がしさが、なんだか別の店に来ているようであまり居心地が良くない。

キヨはキッチンで尚史のために料理を作り、アルバイトのマコトくんとカズミくんが接客に追われている。

カウンター席に座っているOL風の女子2人組はマコトくん目当てなのか、さっきからしきりにマコトくんに話し掛けている。

マコトくんが彼女らにつかまっている分、カズミくんは忙しそうにボックス席とカウンターの間を行ったり来たりしている。

この店にもいろんな客が来るんだなと思いながらRPGのレベル上げをしていると、尚史のために空けておいた一番奥の席に誰かが座った。

尚史にしてはやけに早いなと思って顔を上げると、そこに座っていたのは、さっきまでボックス席で騒いでいた3人組の男性客の一人だった。

その人はやけに近い距離で、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込むように見ている。

直接体に触られたわけでもないのに、その視線だけで不快な気持ちになった。

「こんばんは」

「こ……こんばんは……」

もちろん知り合いではないし、この店で会うのも初めてなのに、突然話し掛けてくるなんて一体なんの用だろう?

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