インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ずっと一人でいるよね。もしかしてナンパ待ち?」

ナンパ待ちって……この私が?

知らない男が死ぬほど苦手なのに、そんなわけあるか!

『違います』と答えたくても、酔った見知らぬ男の視線が怖くて声も出ない。

「良かったらこっちにおいでよ、一人で飲むより楽しいよ」

いやいや、私は知らない男の人と飲むより一人の方が楽しいから!

勇気を振り絞って『待ち合わせをしているから』と断ろうとすると、こともあろうかその男は突然私の右手を握りしめ、肩を抱き寄せた。

その瞬間私の体は硬直して動けなくなり、頭の中が真っ白になる。

「それとも俺と一緒に二人きりになれる場所にでも行く?君、けっこう俺のタイプなんだよね」

耳元でねちっこく囁かれ、全身の毛が逆立つような不快感を覚えた。

手のひらにはジットリといやな汗がにじみ、吐き気までしてくる。

なんとかしてこの状況から抜け出さなくてはと思うのに、私の体は思うように動いてくれない。

「なんにも言わないってことは、OKってことでいいよね?」

私が抵抗できないほど酔っているとでも思ったのか、男は強引に私を立ち上がらせようとした。

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