インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

「じゃあ……喧嘩しても必ず一緒に寝て、朝飯を一緒に食べること。それから『おはよう』と『おやすみ』は必ず顔見て言って、キスすること」

予想に反して激甘な提案が飛び出した。

新婚らしいと言えば新婚らしいのかも知れないけれど、毎日の挨拶とかキスなんて、わざわざ決めてするようなことだろうか。

「でもそれって、わざわざ決めてすることなのかな？喧嘩しても一緒に寝るとか、朝御飯を一緒にって言うのはともかく……挨拶は普通にすれば良くない？」

「挨拶もキスも最初のうちはしてたとしても、年数経つにつれてだんだんしなくなるのイヤだから」

「ふーん……」

うちの両親は毎日普通に挨拶していたと思うけど、たしかに両親がキスしているところは一度も見たことがない。

子どもの前ではしなかっただけなのか、それとも歳を重ねるごとにしなくなったのか。

まだ結婚したばかりなのに、私たちもいずれは歳を取ってスキンシップがなくなるとか、そういうことを尚史は心配しているのかな。

「まぁ……尚史がどうしてもって言うなら……」

「どうしても」

「わかった、じゃあそれも入れとこう。それからギャンブルと借金はタブーだよね。あと絶対に、う……」