インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
一気にまくしたてると、尚史は黙ったままうつむいてしまった。

尚史は昔からこうだ。

自分にとって都合の悪いことは一切言わない。

そんなことは今までなんとも思わなかったのに、今はなんだか無性に腹が立つ。

言い訳でも文句でもなんでもいいから、思っていることをハッキリと言ってくれたらいいのに。

何も言ってくれなければ話し合うこともできないんだから、解決のしようがないじゃないか。

黙り込んでうつむき小さくなっている尚史のつむじを見ながら、私はさらに生ぬるいチューハイを煽って一気に飲み干し、空き缶をシンクの中に思いきり投げつけた。

跳ね返った空き缶が宙を飛び、キッチンの床に落下する。

「尚史はいつも都合が悪くなると黙り込むんだよね。私のことバカにしてるの?そんなんでこの先夫婦としてやっていけると思う?」

私の吐き捨てた言葉は、今の尚史にとっては相当キツイ言葉だったと思う。

だけど私の苛立ちはまだ収まらない。

ハッキリしない尚史を見ていると、余計に苛立ちが増すばかりだ。

私はまた冷蔵庫からチューハイを取り出し、苛立ちに任せて勢いよく煽った。

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