インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
同居初日からいきなりの離婚危機だ。

こんなことが原因で離婚するなんて言ったら、両家の親たちは悲しむだろうな。

これまで家族ぐるみで仲良くしてきたのに、私たちのせいで親たちの関係も悪くなりかねない。

私だって本当は尚史と仲良く楽しく平穏に暮らしたいし、一緒に幸せになりたいと思う。

昨日あんなことがなければ、今頃は二人で笑って晩御飯の支度をしていただろう。

何も知らない方が良かった。

だけど知ってしまった。

『過去のことなんか気にしない』と笑ってやり過ごしていたら、こんな思いもせず、尚史に対してもあんなひどい言葉を言わずに済んだのかな。

そう思うとどんどん涙が溢れて止まらなくなった。

ゲームみたいに時間を戻すアイテムが使えたらいいのに。


カレーの匂いに鼻孔をくすぐられて目が覚めた。

いつの間にか眠っていたらしい。

まぶたを開くとカーテンの隙間から見える窓の外はすっかり暗くなっていて、お宝部屋の床に寝そべっていたはずなのに、私は寝室のベッドに寝かされ、肌掛け布団まで掛けられている。

起き上がってキッチンを見ると、尚史が一人でキッチンに立ってお玉で鍋の中身をかき混ぜていた。

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