インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
就職は人生の中でも大きな分岐点のはずなのに、尚史はそんな大事なことまで私を中心に考えていたんだ。

私のために大きな会社の内定を辞退してしまったことは少しもったいないような気もしたけれど、尚史に何よりも大切に想われているのは嬉しいと思う。

「うん……そっか……。私も尚史とすぐ近くの会社に勤めることになって、嬉しかった。高校大学と別々で、あまり会えなかったでしょ?昔みたいに一緒にいられなくて、寂しいなと思ってたんだ」

「俺もモモが昔と全然変わらずに笑ってくれて、一緒にいられて嬉しかった。それでキヨがあの店でマスターになってしばらく経ったときに、モモの黒歴史を聞いて、めちゃくちゃ嬉しくて笑いが止まらなかった」

尚史は私が昔付き合っていた男に押し倒され恐怖のあまり股間を蹴りあげて逃げたという話を聞いたとき、『モモはまだ誰のものにもなっていないんだ』と思ったそうだ。

おまけに私が『恋愛なんてめんどくさい、2次元でじゅうぶん』と言ったので、『幼馴染みのままでいればこれからもずっとモモと一緒にいられる』と思ったとも言った。

「ホントはモモの恋人になりたかったけど……一緒にいられるならなんでも良かった。水野との関係がやっと断ち切れて、モモのことだけ考えていられるだけでも、俺は幸せだったから」

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