インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
もしかしたら水野さんは、尚史を繋ぎ止めるための手段として私に何をするかわからないと言っただけで、本当は私には何もするつもりはなかったんじゃないだろうか。

その証拠に、私はパーティーの夜まで水野さんと直接会ったこともなければ顔も知らなかったし、高校時代から私のことを調べたりあとをつけたりしていたと言うわりに、嫌がらせのひとつもされなかった。

人を好きになると周りが見えなくなって、その人に好かれるためならば、誰が見ても滑稽なことをしてしまうのかも知れない。

「いくら好きだったって言っても水野さんが尚史にしたことは正しいとは思わないけど……水野さんはもう間違わないと思うよ。自分が人にしてきたことがどれだけ相手につらい思いをさせていたのかを、身をもって味わったんだから」

私は尚史が好きだから、何があっても水野さんに尚史を譲る気なんてないけれど、水野さんが過去の自分の行いをしっかり反省して、いつか立ち直って、今度こそ身代わりではなく心から愛する人に愛されて幸せになってくれればいいなと思う。

「因果応報か。人を陥れようとか、人の不幸を願ったりとかするもんじゃねぇな」

キヨはしみじみとそう言って、私と尚史にビールのおかわりを差し出した。

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