インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
入浴を済ませて自分の部屋に戻り、ベッドの上に寝転んで大きく伸びをした。

そしてなんとなく右手をじっと見る。

キヨの店であのナンパ男に手を握られたときは不快感で吐き気までしたのに、尚史に手を握られてもまったく平気だったのだから不思議なものだ。

それはやはり信頼関係の違いなんだろう。

小さな頃からお互いをよく知った仲の尚史が、急に私に襲いかかったりはしないとわかっている安心感は大きい。

尚史と手を握り合ったのは、ほんの一瞬、せいぜい1秒くらいのことだったと思う。

それでも尚史の手の大きさを実感するにはじゅうぶんだった。

小学校の4年くらいまでは私の方が大きかったのに、いつの間にか背を追い越され、中学生になると小柄だった尚史が成長期の波に乗って手足も肩幅も私よりずっと大きくなっていた。

ナンパ男に拉致されそうになったところを助けられて、尚史は私より体が小さかったときも、いつも私のことを守ってくれていたことを思い出した。

いまさらだし当たり前だけど、尚史は男で私は女だと言うことだ。

背中の真ん中辺りの自分の手が届かない場所がむず痒いような、直に触れることのできないお腹の奥がくすぐったいような、不快感とも違和感とも違うこの不思議な感覚はなんだろう?


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