インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ん?あー……今日はいいや」

今日はいいってなんだ?

尚史におごってもらう理由なんてないんだけど。

「……なんで?自分の分くらいは払うよ」

「なんでも。じゃあ明日コーヒーでもおごってもらおうかな」

「だからなんで?夕食代とお茶代じゃ金額が全然違うでしょ」

私が食い下がると、尚史はまた少し呆れた顔をして、大きな手で私の頭をポンポン叩いた。

「仮想だけど、今は俺がモモの彼氏だから」

「かっ、かっ、彼氏って……!」

予想の斜め上を行く甘ったるい言動に度肝を抜かれ、思わず声が上ずった。

まさか尚史の口からそんな言葉が出てくるとは!

「だけどそれだと尚史が破産するよ?」

「それくらいでするわけないだろ。要らん心配すんな」

「いやいや……やっぱダメ。私お金はなくてもその辺はちゃんとしときたいの、尚史とは対等でいたいから。食事代とかその他諸々の代金は割り勘にするってことで」

もしこれが仮想ではなく本当のカップルだったとしても、私は毎回彼氏におごられるなんて気が引ける。

おごられるのが当たり前のような妙な関係にはなりたくないし、尚史と食事をするたびに心苦しい思いはしたくない。

< 92 / 732 >

この作品をシェア

pagetop