インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
それをあえてやってみたことで、私たちも漫画やゲーム以外の話で盛り上がることができるのだと言うことがわかった。

これが本物のカップルなら、きっと愛だの恋だの語らい胸焼けしそうな甘い言葉を囁くのだろうけれど、恋愛レベル1同士の仮想カップルの私たちにとっては、これくらいで上出来じゃないだろうか。


電車に乗ると尚史は昨日よりさらに私との間隔を詰めて座った。

尚史の肩が思っていた以上に近い。

満員電車ならともかく、車内は空いていて座席もたくさん空いているから、いくら相手が尚史とは言えこの距離感は落ち着かない。

うつむき加減で膝の上に乗せた両手の指先を意味もなくこすり合わせていると、尚史は少し離れた場所にいるラブラブな若いカップルをしばらく眺めてから、上半身を少し傾けて覗き込むように私の顔を見た。

「明日は限界まで間隔詰めて座ってみる?」

「えっ、限界まで詰めたらくっついちゃうんじゃないの?」

「うん。でもほら、そこのカップルがそうしてるから、カップルってそんなもんなのかなーって」

そう言って尚史は顔を上げ、また例のカップルの方を見た。

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