W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
なぜか、「俺も一緒に乗っけてって?」と後ろの座席を陣取りにこにこ笑ってる涼月。
助手席の梗月と目を合わせ、静香は肩をすくめて出発した。

会社についてロビーを通ると、社員たちのどよめきが起きる。
それもそのはず、なぜか同じ顔の社長が二人、並んで歩いてるのだから…。
廊下をすれ違う社員たちも驚きの表情。
そんな様子を楽しそうに見ている涼月に、いつもの真顔の梗月。
些細な表情を取っても性格の違いが垣間見える。

先に、涼月を監査の作業をする会議室に案内する。
静香が中に入ると、総務部の武田課長と、顔を見たことが無い男性が4人いた。たぶん監査の人達だろう。

「社長、おはようご…。しゃちょう?」
「本郷専務・・・え?」

ハトが豆鉄砲を喰らったようにぽかんとする人達。
ドアを開けた静香の後ろから入ってきた二人に言葉を失っている。

「う、これは…どちらが社長でどちらが専務ですか?双子とは聞いてましたがこれほど似てるとは…」

武田課長が困ったように言っているのを、涼月は肩を揺らして笑いを堪えていて、梗月は何とも言えない渋い顔で見ている。
見かねた静香が声を上げる。

「こちらが社長、そちらが本郷専務です」

「そ、そうでしたか。これは失礼しました。本郷専務ようこそおいで下さいました。資料の用意は出来てます。皆さんお揃いの様ですので後は宜しくお願い致します」

武田課長が取り繕っているのを見て、慌てて監査の人達も名刺を出して梗月に挨拶をする。
一通り挨拶が終わって涼月を置いて静香たちは社長室に向かった。

確かに二人はそっくりだけどそんなにわからないんだろうか?
逆に何が違うのか?と、問われても答えにくいけど、梗月と涼月は違う人間。
クローンじゃない限りまったくの別人だ。
前を歩く梗月の背中を見つめながら静香はそんなことを思っていた。

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