W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
「え、梗月さん?」

近づいて見ると上着をお腹に掛け、顔が腕で隠れているけど間違いなく梗月。昨日のスーツのままだから家に帰らずにここに泊まったのだろう。

「梗月さん、何でこんなところに…」

脱力してその場にへたりこむ。
家にも帰らずここで一人、何を考えていたのだろう。
奈津子のことなのか、結婚のことなのか、涼月のことかもしれない。

「ん…」

急に動き出して寝返りを打ったから、ビックリして後ろに仰け反ったけど、スゥーと寝息が聞こえ、そのまま動かなくてまだ寝ているよう。
体制を立て直し、顕になった顔を覗きこむ。
目の下に隈が出来てる。朝方まで寝られなくてやっと今寝たところなんだろう。
こんなに梗月を悩ませる奈津子が憎らしい。

このまま寝かせてあげたいけど今日も普通に仕事だ、起こさなきゃ。でも……。

梗月の顔を見つめながら動けないでいた。
梗月は今でも奈津子の事を愛してるのだろうか。そうだとしたら今は結婚しないと言っていてもいずれは奈津子を選んで結婚してしまうのかもしれない。
両親がそれを望んでいるし、どちらかと結婚するのは決定事項のように奈津子は言っていた。

私は…そうなった時に、笑っておめでとうと言えるのだろうか?
もう、絶望的とも言える私の恋はそれまでに昇華することは……。

出来るわけがない。
このいつの間にか膨らんでいた想いはそんな簡単に消せやしない。
だからといって今告白する勇気はなく、きっとこのまま成り行きを見守ることしか出来ないんだろう。
いずれ梗月の顔をこうやって間近で見つめることも毎朝起こすことも出来なくなるかもしれない…。
そんな事を思っていると自然に頬に涙が伝っていた。

私、梗月さんのことどれだけ好きなのよ。バカだな。この恋が成就することなんて決してないのに…。

静香の家はただの一般家庭。
サラリーマンの父と専業主婦の母。7才年上の兄が一人。
大企業の本郷グループとは月とすっぽん。釣り合うはずがない。
それに引き換え、奈津子は大手ゼネコンの城ヶ崎建設の一人娘。生まれながらにしてのお嬢様だ。
梗月と奈津子が結婚すれば、本郷グループと城ヶ崎建設が手を組み日本の大部分の経済を動かすマンモス企業になる。
到底静香なんて太刀打ちできない。

ふるふると頭を振る。

そんな事考えても仕方ない、今は残り少ない同じ時間を大切にしたい。

< 31 / 109 >

この作品をシェア

pagetop