W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
少しでも目に焼き付けていたいと一心に見つめていると、梗月の瞼が震え、ゆっくりと目を開けた。
いつものように寝ぼけた感じで静香を見ると、そっと梗月の手が頬に触れた。

「しずか……なんで、ないてるの…」

掠れた声で問う梗月に涙を流しながら笑いかけた。

「なんで、こんなところで寝てるんですか、家にも帰らないで…。ホントに梗月さんはソファーで寝るのが好きですね…」

話しながら触れていた手に手を添えて見つめると、その手が後ろに移動してゆっくりと引き寄せられた。
近づくにつれ目を閉じ、静かな、本当に静かな時間が流れ……ようとしたとき、
ガチャっと何の前触れもなくドアが開いた。

「梗来てるか?……っと、梗、静香ちゃん?」

ドアが開いた瞬間に我に帰った梗月と静香 。
梗月はガバッと起き上がり、静香はドアと反対側に顔を背け慌てて涙を拭いた。

「なんだよ涼、入るときはノックしろと言ってるだろ」

頭を掻きながらあくびをしている梗月。
静香は立ち上がって明るく騒ぎ出した。

「きょ、梗月さん!もう、始業時間ですよ!早く着替えてください!」

ここには何着か着替えが置いてある。今日はもうここで着替えて仕事をしてもらうしかない。
パタパタとクローゼットに行き置いてあるスーツを出す。

「なんだ梗、ここに泊まったのか?何で家に帰らない?」

「帰る気にならなかった…。ずっと考えていたんだ…。」

「何を?奈津子のことか?」

「……」

クローゼットに向いてるから、二人の会話が聞こえても表情まではわからない。
無言になった梗月はやっぱり奈津子のことを想っているということなのだろうか?
ワイシャツを持ったまま、また思考の深みに嵌まっていこうとする頭を振って、振り向いた。

「さ、梗月さん着替えてください!あ、その前に顔洗って来てくださいよ!涼月さんも仕事してください!」

立ち上がった梗月の背中を押し、涼月も一緒に社長室から追い出した。

とにかく今は仕事!いつものようにしないと!

自分の両頬をバチンと叩き気合いを入れた。




< 32 / 109 >

この作品をシェア

pagetop