W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
完全に存在を忘れていた前澤副社長が一人納得顔でウンウンと頷いていた。
我に帰った静香達はパッと手を離しお互い反対側を向いて、静香は涙を拭き、梗月は目をうようよさせて挙動不審になっていた。

「そうか、家族同様、愛あればこそだったんだなぁ」

「え、いや、あの……」

感慨深げに二人を見ながらしみじみ呟いているから、なんて説明していいかわからなくてあたふたしていた。

「前澤さん…、あ、静香ちゃん!」

涼月がノックもなく入ってきて静香がいたものだから大騒ぎして、静香を連れて帰るとホントに言い出した。

「静香ちゃんは自分のこと何も知らないでって言っただろ?なら今から一緒にいる時間を作ってお互いを知ればいいだろ?」

「そんなの無理ですって!」

「涼月くん、新村さんは…」

「はぁ、わかったよ」

前澤副社長が何か話そうとしたとき、梗月の大きなため息が話を割った。

「静香くん、申し訳ないが少し涼月に付き合ってやってくれないか?こいつは昔から言い出したらきかないんだ。子供みたいにね」

「なんだと!」

呆れたように横目で涼月を見た梗月に食って掛かって一触即発。また喧嘩しようとする二人に叫んだ。

「わかりました行きます!だから喧嘩しないでください!」

何故か静香がゼイゼイと肩で息をして二人を睨む。

「また喧嘩したら二人とも絶交ですよ!」

子供みたいなことを言ってしまったけど、二人は離れて涼月はご機嫌、梗月は複雑な顔をしていた。

「静香くん、ごめん…」

「じゃあ早速俺んち行こう!」

喜び勇んで静香の肩を抱こうとする涼月の手を叩いて顔を見上げた。

「待ってください。その前に約束を」

「わかった、もう喧嘩しない!」

身変わりの早い涼月は梗月の肩を抱いて仲良しアピール。梗月は嫌そうな顔をしている。

「それと、今日は行きません。私にも準備がありますから。明日泊まりで涼月さんの住む町まで行きます。もちろんホテルに一人で泊まります。時間の許す限り一緒にいますから。それでいいでしょう?」

「え~身一つで来ても全然かまわないのに…」

拗ねて口を尖らす涼月

「私がかまうんです!ダメなら行きませんよ!」

「OK!わかった!じゃあ待ってるから!」

脅しが効いたのかビシッと立って敬礼ポーズを取る涼月がおかしくてちょっと笑ってしまった。

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