W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
次の日も、眠れずぼーっとした頭を振って出勤。
朝からご機嫌だった涼月はやはり食欲もなくあまり食べられない静香を気遣いながらも専務室で別れると、静香は秘書室に向かった。
今日もハードスケジュールの専務付き秘書の坂巻に付いて回る。
ふと、声を掛けられた。

「新村さん、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です!何ともありません。今日もよろしくお願いいたします」

心配そうな顔を見せる坂巻ににっこり笑顔で返し割り当てられた仕事をこなした。

少し遅い昼休憩を取るため休憩室に来て、コンビニで買ったサンドイッチとココアをテーブルに置いて座ると一つため息。
目を瞑ると梗月の事が思い出されて、今一人でちゃんとやってるだろうかと心配でもあった。
そんなことを思って一口ココアを飲むと、持っていたスマホが震えた。
見ると、梗月からの電話で、ドキッとしながらも、仕事の話だと思って息を一つついて電話に出た。

「はい、新村です」

「静香くん、悪いね、今大丈夫かな?ちょっとわからないことがあって」

「はい、今丁度休憩してたところなんで大丈夫です」

「ああ、良かった。早速なんだけど・・・・」

来週必要なデータのありかが解らなくて今、私のパソコンを見ていたそうだ。
言われたデータをどこに入れたか思い出しながら言うと、

「あ、あった!今日の会議に使いたかったから助かったよ、ありがとう」

「いえ、データも渡しておけばよかったのにすいません」

「いいんだよ、静香くんに電話する口実ができたから」

フフッと笑う声が電話越しに聞こえて、なぜか涙がこみ上げてきた。
心配で、涙声を気づかれないように気を付けながら、朝はちゃんと起きられてるのか?困ったことはないのか?矢継ぎ早に質問した。

「ふふ、心配しなくてもちゃんとやってるよ。そっちはどお?何とかやれてるかい?」

「…はい、専務秘書の坂巻さんに付いていろいろ学ばせてもらってます」

「ああ、燈夜(とうや)さんか。彼厳しい人だけど、大丈夫?いじめられてない?」

「ふふ、苛められてなんていません。優しく教えてもらってます」

「優しくね・・・。涼月は、どうしてる?」

楽しく話してたはずなのに、低い声になり涼月の話を持ち出す梗月。

「バリバリ仕事をこなしてるようです。意外と仕事中は顔を合わせないんですよ」

「そうか…。社長…父さんとは会った?」

「…はい。お母様もいらっしゃいましたが、私が体調を崩してしまってあまり話もできずに早々と帰らせてもらって…」

「え?大丈夫なの体は?無理してない?」

思わず体調の事を零してしまい慌てたように聞いてくる梗月に嬉しさと申し訳なさで、何とか堪えていた涙が一筋零れた。

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