W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
「…大丈夫です。ちょっと緊張しただけなんで。…社長、あれから奈津子さんから連絡はありました?」

「え?奈津子から?いや、音沙汰なしだよ」

「そうですか…」

声からして嘘を言ってるようでもない。
奈津子は梗月にはあれから連絡もないということは、涼月にだけよりを戻したいと言ったのだろうか?
ということは奈津子は涼月が好きなのか?
でも、梗月は奈津子の事を…。
この3角関係に巻き込まれた形の静香はどう判断していいのかわからなかった。

「…静香くん、ホントに大丈夫?」

「…大丈夫です。梗月さん…」

「ん?なに?」

思わず名前で呼ぶと優しい響きで帰ってきた問いに昨日の事を打ち明けた。

「私、涼月さんのプロポーズを受けました。…これで、これでよかったんですよね?梗月さん」

「……そう、おめでとう。僕は、心から二人を祝福するよ…。」

「梗月さん、私は…」

静かに祝福を送る梗月に、思いが溢れて涙が零れて言葉が詰まる。

やっぱり、私は梗月さんが好き…。
声を聴いてるだけでも想いが募る。

「帰ってきたら、改めてお祝いするよ。じゃ、また」

「…梗月さん」

通話の切れたスマホを握りしめたまま呆然とする。

引きとめてほしかった…。
結婚なんかするなと言ってほしかった。
やっぱり、私は梗月さんにとってはただの秘書でしかなく、梗月さんの愛してる人は奈津子さん?
私は、このまま涼月さんと結婚するの?
この想いを抱いたまま・・・。
解らない、解らない。

どうしたらいいのか、自分はどうしたいのか解らなくて、気付いたらぼろぼろ涙を流して突っ伏してしまった。
幸い休憩時間がずれていたため人は疎らで、何とか声を漏らさないように必死になって押し殺していた。それでも鼻をすする音が広い休憩室に響いて早く泣き止まなきゃと気ばかり焦っていた。
しばらく経ってやっと落ち着いてきてから顔を上げると誰もおらず静香一人。

バカみたいだ私…。

ふぅーと長いため息をついて、まだこれから仕事があるのにきっとひどい顔をしてるだろうと、化粧室に行くために重い腰を上げた。

何とか取り繕ったメイクも赤い目と鼻は隠せなくて仕方なく秘書室に戻ると、坂巻が待っていて専務が呼んでいると静香を伴い専務室に赴いた。
今こんな状態で涼月に会いたくないと思いつつまた小さなため息をついた。

< 59 / 109 >

この作品をシェア

pagetop