W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
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初恋は涼月と同じで奈津子だった。
それはただの恋の芽生えに過ぎず、一緒にいるだけで満足できる幼いものだった。
初めて恋い焦がれる想いを抱いたのは、中2の時の同級生で席が隣で同じ図書委員の子だった。
梗月は図書委員とは名ばかりで、いつも委員の仕事をサボり屋上や、校庭の木陰で本を読んでいた。
それをいつも探しにくるのは彼女で、同じ場にいるわけではないのに梗月を探し当てては図書室に連行していた。
普段物静かな子なのに梗月を探し当てた時だけぷんぷん怒りながら腕を引っ張り連れてかれる。
その姿が可愛くて、いつも探し当ててくるのが不思議でわざと隠れたこともあった。
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「初めて付き合った子だった。小さくて可愛くて世話好きで、そう…静香くんみたいな子だった。」

静香を見ながらその人を思い浮かべてるのか、懐かしむように微笑む梗月に、ずきりと胸が痛んだ。

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二人で好きな本を読みながらいろんな話をした。
穏やかで幸せで、ずっと彼女と一緒に生きていきたいと思うほどに恋に溺れた。
だけど、別れは中3のもうすぐ卒業を迎えるころに訪れた。
別れを切り出したのは彼女で、静かで面白みのない梗月より明るくて楽しい涼月の方が好きになったと言う。
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「ショックだった…。その子と涼月が一緒に居るところなんて見たことが無かったから、涼月とも付き合っていたと聞いて、全然気づいていなかった自分が情けなくて、僕は何も言えなまま別れた。」

「…」

目を伏せ、肩を落とす梗月を見つめる。
慰めてあげたい気もするけど何も言えない…。

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同じ高校に進むことが決まっていたから、高校に入ったとたん他人行儀に接してくるその子を見るたび苦しかった。
涼月を恨んだこともあったけど、別れた後、涼月とその子が付き合っている様子はなかった。
涼月を問いただすと、彼女を誘惑したのは事実で、でも彼女は頑として涼月を突っぱねたそうだ。
……
彼女は嘘をついていた。
別れた本当の理由は、梗月と付き合っていることに嫉妬した子達に陰で陰湿な嫌がらせを受けていてそれに疲れたから。
梗月といるときはいつも明るくて、そんなことになっていたなんてみじんも感じなかった。
知らずにいた自分の馬鹿さ加減に打ちひしがれた。
彼女に謝って、一度だけ、もう一度やり直そうと言ったけど、彼女はうんと言ってはくれなかった。
彼女を忘れるために、言い寄ってくる子と付き合ってみたけど、いつもそっけない態度を取っていたせいか、涼月の方がいいとすぐに振られていた。
涼月が付き合ってる子を誘惑してるのは薄々感づいてはいたけど何も言わなかった。
誰と付き合おうと忘れられない存在がいたから・・・。
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