W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
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新人ながら前社長の秘書をしていた静香は、持ち前の明るさと面倒見の良さが前社長にいたく気に入られて、ぜひそのまま社長付きの秘書にと勧められ新任の梗月の秘書になった。
今まで秘書を付けたことが無かった梗月は、仕事をそつなくこなし、小さなことも気が利く静香に感心していた。
そして、社長の梗月にも物怖じしない物言い、面倒見の良さにも。
朝の弱い梗月を見かねて朝起こしに家に行くと言われた時には驚いた。
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「や、そんなこと思い出さないでください、梗月さんがいつも遅刻ギリギリに来るからじゃないですか、恥ずかしい…」

「ふふ、君は人の心を開かせる天才かも知れない。僕はいつの間にか君には取り繕うことなく本当の自分をさらけ出していた」

昔の話をしだすから恥ずかしくて俯いた。顔が熱い。

「居心地がよかった。静香くんといる時間は穏やかで楽しくて、からかうとすぐ怒る姿が可愛くて…僕の中で君の存在は大きくなっていったんだ」

ばっと顔を上げると、目を細め空を見上げる横顔。
それが眉を顰め哀しそうな顔をゆっくりとこちらに向ける。

「だけど、また自分が望むことで君が傷つくんじゃないかと、自分の気持ちに蓋をした。…君は、僕に付いてることで周りから嫌がらせを受けたりしなかったかい?」

「え…、いえ、たいしたことは…」

自分の事を案じていたなんて知らなかった。
最初の頃は多少の陰口や、噂を流されたけど直接何かされるということはなかったし、梗月の心配するようなことにはなっていないと思う。

「ごめん…僕のせいでやっぱり嫌な思いをしてたよね。昔の二の舞にならないように必要以上に関わらないようにはしてたけど……。ふふっ、君は家にまで押しかけてきてぐいぐい来るから甘えてしまったよ」

「え、だって…その…」

思い出したように笑って、悪戯をするような目になって静香を見つめる梗月に、ドギマギして言葉が見つからない静香。
そっと静香の頬に触れた後、また悲しそうな顔をする梗月は両腕を膝の上に置き手を組んで口元を乗せた。

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