W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
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このままでもいいと思った。
静香が傍に居てくれればその先を望まなくてもいい、今の関係を壊したくなかった。
だけどそれも、涼月が監査で来ることになって変わってしまった。
涼月は意外と目聡い。静香に何かするんじゃないかと不安だった。
案の定、出合った瞬間に涼月は静香に興味を持ってしまった。
静香に絡む涼月を苦々しく思いながらも、負い目があった梗月は何も言えないでいた。
奈津子の登場で静香を婚約者と言いだしたときにはショックでその場にいることが出来なかった。
家にも帰る気にならなくて、気付いたら会社の前で、社長室で一人で考えていた。
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「ずっと考えていた…、君の事を。目を瞑っても思い浮かぶのは君の笑顔で、涼月に奪われるのかと思うと初めて失う恐怖を感じた」

あの時、社長室で一人思っていたのは奈津子の事でも涼月のことでもなく、自分だったと聞いてちょっと嬉しく思った。
相変わらず下を向いたままの梗月を見つめる。

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奈津子から逃れるために必死だった涼月は頑なに静香を連れて帰ると言いだした時、その場を納める為に行かせる事を提案した。
静香が良ければ前向きに考えてくれと言ったのは自分が静香のことを諦める為だった。
涼月から静香を本社に出向させてほしいと電話が来た時に言われた。
「静香ちゃんって可愛いよな。俺、本気で静香ちゃんと結婚したくなった。梗、いいよな?俺が静香ちゃんを貰っても。今度は邪魔するなよ」
牽制を掛けてきた涼月に何も言えない。
涼月は静香に本気になってしまった。
現実に二人が結婚するかも知れないと思うと諦めるつもりで行かせた事を後悔した。
だけど二度と同じ過ちを繰り返したくない。
涼月が本気なら自分は身を引くしかなかった。
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「これは、自分の過ちの代償、罰だと思ったよ。だけど、ぽっかり空いた穴は大きすぎて愕然とした。」

「梗月さん…」

「なのに、涼月にキスされたと聞いて醜い嫉妬心に駆られて君の唇を無理やり奪ってしまった…。すまない」

「いえ…」

下を向いたまま頭を下げる梗月。
無理やり…だったかも知れなかったけど静香は嬉しかった。でも、その後のむなしさを思い出して胸が苦しくなる。

「静香くんが涼月に連れられて行ってしまってからは、何も手に付かずにかなり前澤さんに迷惑をかけた。君に電話した時は仕事中な装いをしてたけど、ホントはデータなんて必要なかったんだ。ただ、君の声が聞きたくて…」

「え、そうだったんですか…」

顔を上げ恥ずかしそうにはにかみまた下を見る。

「君が、涼月のプロポーズを受けたと聞いて、自分の間違いに気づいた。諦められるわけがなかったよ。想いは膨らむばかりで後悔が押し寄せて頭を抱えた。そんな僕を見かねた前澤さんに言われたんだ…」

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