W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
ーーー
『君と新村さんはお互い想い合ってるように見えたけどね。手離してはいけなかったんじゃないかい?例え相手が涼月くんだったとしても…。君は今、真実の愛に気付いた。なら後は行動あるのみだよ、梗月くん』

それでも一晩悩んだ。
また涼月を裏切り、愛する人を奪ってしまうのかと思うと気が引けた。
この喪失感を涼月も味わっていたのかと思うとたまらなく過去の過ちを後悔した。
だけど、朝方眠れずにうつらうつらしているときに夢を見た。

「おはようございま~す。涼月さん!またこんなところに寝て!ちゃんとベッドで寝てくださいって何回言ったらわかるんですか?もう!こんなに体が冷えてる!早くシャワー浴びて来てください!その間にご飯作っておきますから!」
いつものようにプンプン怒りながら梗月を起こす静香。
いつもの日常。
いつも起こされる度に寝ぼけたふりして静香の姿を見ていた…。

ソファーに背を預けた体制で薄目を開けると、窓の外は太陽が昇り始めてまぶしい光が部屋の中に入り込んでいた…。
ーーー

「僕は、手放そうとしていた日常を、もう一度、手に入れたいと思った」

組んでいた手にグッと力を入れ、真っ直ぐ前を見る。

ーーー
意を決して立ち上がった梗月。
実家に車を走らせている間に涼月から電話が来た。
わざわざ、これからじい様に会ってくると告げた涼月は、その後一言だけ言って電話を切った。
「梗、お前は静香ちゃんの気持ちを考えたことあるか…?」
それを聞いただけでも気持ちが逸った。

静香の気持ちがどこにあるのか?
薄々は気づいているけれど…。
ーーー

「僕は、自分の事で精いっぱいで、君の気持ちを考えていなかった。こうやって無理やり連れ去って…。僕は君の気持ちも聞かずに僕の我が儘で動いてしまった。ごめん……」

伏し目がちにこちらにゆっくりと向くと、目を上げ、ずっと梗月さんを見つめていた静香と目が合った。

「僕の懺悔はここまでだ。話を聞いてどう思う?僕はやはりひどい男だろう?」

嘲笑気味に笑ってまた目を伏せる梗月さんに、笑いかけた。

「懺悔だなんて、後半は愛の告白にしか聞こえませんでしたよ…」

「そ、そうか?いや、そうなのかな…」

自分で言って恥ずかしくなって顔を赤らめると、梗月もほんのり赤くなってしどろもどろになってる。
お互い目が合うと、ぷっと吹き出してしまった。

そこへノックの音がして、ドアの向こうから声がする。
「梗月くん?食事の用意ができたから降りてきて。料理が冷めないうちに食べてね」

「あ、はい」

ずっと話をしていてあっという間に時間は過ぎていて、気が付くと空はオレンジ色になっていて夕日が沈むところだった。
立ち上がり、部屋へ入ろうとするとそっと手を掴まれ、振り向いた。

「僕の質問は食事の後で。その後、静香くんの返事が欲しい…」

「…はい」

真剣な面持ちの梗月を見て、揺れる瞳のまま頷いた。
< 78 / 109 >

この作品をシェア

pagetop