身代わり令嬢に終わらない口づけを
「はい。私も驚きました」

「そう……」

 振り向いたベアトリスは、不安そうなローズに向かってにっこりと笑った。

「覚悟はしていたけれど、心細いことには変りはないの。ローズ、私と一緒にカーライル公爵家に行ってくれるかしら?」

 それを聞いて、ローズは、ぱ、と顔をほころばせる。

「もちろんです! 私はいつまでも、お嬢様のお側におります」

 身代わりなどで振り回されることも多いが、ローズはベアトリスが好きだった。

 キッチンメイドから令嬢付きの侍女になって、ローズの待遇は劇的に変わった。それだけでもローズにとってはありがたいことだったのに、ベアトリスは身分の低いローズにもまるで家族と同じように接してくれた。面白がって自分の服をローズに着せては人形のように着せ替えを楽しんだり、、具合が悪そうなら心配してこっそりと自分用の高い薬を飲ませてくれたり。

 ただの主従関係を越えて、ローズはベアトリスを本当の姉のようにも友達のようにも慕っていた。
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