身代わり令嬢に終わらない口づけを
「ですから、私は……」

 レオンの真意を図りかねてローズが戸惑っていると、教会内に、ほう、と静かな感嘆が広がった。ローズが祭壇に目を向けると、ちょうどハロルドとベアトリスが誓いのキスをしたところだった。

「わ……」

 光の中で輝く美しいその姿にローズも声を上げかけたところで、ぐい、とその顔をレオンの方に向けられた。驚く暇もなく、レオンが唇を重ねる。


「……!」

 まわりの人々は全て祭壇に目を奪われている。レオンとローズだけが、お互いの姿を瞳の中に映していた。

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