身代わり令嬢に終わらない口づけを
 祭壇の二人と同じタイミングで名残惜し気に唇を離して、レオンが間近で囁いた。

「兄上がカーライル公爵家を継いだ後、俺はエインズワース領にうつってそちらを治めることになった。そこにお前を連れていきたい。もう一度聞く。公爵夫人は嫌か?」

 三度目にしてようやく、ローズはレオンの言いたいことを察した。


「でも……」

「トロレンダ伯爵夫人が、お前の後見を引き受けて下さった。ご自分の養女としてくださるそうだ。あのトロレンダ伯爵夫人の娘なら、俺の相手として父も文句があるまい」

「トロレンダ……クリステル様が?」

 昨日は式の準備で慌ただしかったので、ローズはクリステルには簡単に挨拶をしただけでそれ以来会っていない。

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