身代わり令嬢に終わらない口づけを
「私は……」

「イエス、以外の返事は聞かない」

 そう言って、もう一度レオンはローズに口づけた。先ほどの触れるだけのそれとは違い、いつまでも終わらない口づけにローズは身をよじる。


「ん……レオン様、も……」

 逃げようとすると、体ごと抱きしめられてさらに深く求められる。

「だ、だめで……ん……レオン様、待って……」

「では、イエスと答えるか?」

「でも……」

「イエス以外は聞かないと言ったろう」

 甘やかに唇を食んで、文句ごと、レオンはローズの吐息を飲み込んだ。どれほどに暴れても、レオンは抱きしめたローズを離さない。

(レオン様……)

 次第にぼんやりと頭の中が霞がかって、ローズはレオンのことしか考えられなくなる。抗う体の力が抜けて、たくましいレオンの腕にくたりと体を預けた。もう、結婚を宣誓する神父の声も、二人に気づいた近くの使用人たちの驚いたような視線も、何もわからない。

 感じるのは、レオンがローズを求める熱だけだ。
< 225 / 226 >

この作品をシェア

pagetop