ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
――飛鳥! 待って! もっとちゃんと話し合……
後ろ姿を追って廊下に飛び出した僕は、玄関ドアを押し開ける彼女に叫んで……口を閉じた。
ドアの向こうに、誰かが立っていた。
――大丈夫か?
矢倉、だった。
――ありがとう、迎えに来てくれて。
――荷物は、それだけ?
飛鳥が頷いたことを確認して、矢倉が入ってきた。
荷物を取り上げると、彼女を僕から隠すように外へと促す。
――飛鳥……
踏み出した足は、矢倉に阻まれた。
牽制するような、力強い目で睨みつけながら言う。
――悪いけど、こっちも譲れないから。
ガチャン
ドアの音が、ひどく金属的で、冷たく遠く聞こえた。
拒絶するように、それは僕と飛鳥との間を隔て……二度と開かなかった。