ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

――うわぁあ、あの人見てぇ！
――ええっ！　かぁっこいい！
――モデルさんかなぁ。知ってる？

遠巻きにした人たちから、聞こえてくる声。

そちらへ顔を向けると。
きゃあっ！　といくつもの悲鳴が起こった。

このあたりで働いてるＯＬだろうか。どの子もみんな、おしゃれで可愛い。
モデルだってできそうな美人もいる。


でも、違うんだ。


と、目を伏せる。

他の女性じゃなくて、他のだれでもなくて。
飛鳥じゃないと、駄目なんだ。


初めてだった。
未来まで共にしたいと思った女性は。

結婚なんて、興味なかった。
金も時間も、好きに使えるシングルは、気楽で自由で。
そんな日々が気に入っていたし、満足してたから。

でも飛鳥に出会ってから、僕の中で確実に何かが変わり始めた。

ギュッと、服の上から胸を掴む。

想うだけでここがこんなに、息ができないほど苦しいなんて。
昔の友人連中が聞いたら、なんて言うだろう？
いや、まず信じてくれないだろうな。