ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
彼は、頭のいい人だし。
時間が経てば、これでよかったんだって、切り替えられるはず。
彼の心の傷を癒すのは、私じゃない。
リー総帥の決めた、完璧なフィアンセだ。
頭に浮かんだのは、彼の幸せそうな未来予想図。
微笑みかける先には、私じゃない女性……
動揺のせいだったのかもしれない、くるりと体の向きを変えた私は――ガサッと思いっきり書類を踏んづけてしまった。
急いで拾って皺を伸ばし……破れてないことにホッとする。
これって、契約関係の書類じゃない。
人目につくところにあっちゃまずいやつよね。
床に膝をついて同じような書式のものを手早くかき集め、デスク上へ置いて。
これでよし、と振り返り。
その時だった。
「……んんっ」
ライアンが大きく伸びをして……全身がフリーズした。
しまった、と後悔に苛まれながら、ドアとの距離を測る。
ダッシュすべき?
間に合う? 無理?
どうしよう、とオロオロしてるうちに、完全にタイミングを逃し――
彼は金髪をかき上げながら、緩慢な動作で上体を起こしていく。
そして。
とろんと瞼の降りかかった目がゆっくり上がり、立ちすくむ私の姿を認めた。
「えっ……!? あす……か?」