ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「僕の不調の原因を一番よく知ってる君に、そんなこと言われるとはね」
「っそ、れは……」
居たたまれずにうつむいた視界の端に、ゆらりとソファから立ち上がる彼が映った。
「家だと眠れなくてさ。あれからずっと」
抑揚のない声で告げ。
一歩一歩、近づいてくる。
何?
なんか、彼の様子がおかしい……?
いつもと違う雰囲気を感じて、ジリっと後ずさった。
「ねえ飛鳥、心配してくれたんだ、僕のこと?」
「そりゃ……もちろん」
間近までやってきた彼は私を見下ろし、その完璧なラインの唇をゆったりと綻ばせた。
その表情はどこか妖しく脆く、底知れない何かを秘めているようで、胸がざわめく。
「自分のせいで僕がぶっ倒れたりしたら、気分悪いもんね?」
美しい悪魔に魅入られてしまったみたいだ。
彼から目が、離せない――
「じゃあさ、協力してよ」
彼の指が、私の頬をさらりと撫で。
その感触に、ゾクリと身体が戦慄いた。
「きょ、協力……?」
「僕がぐっすり眠れるように、協力して?」
「協……って、なに、――っ!」
ぐいっと二の腕を掴みあげられて、ひっと喉の奥からつぶれた声が漏れた。
見上げた美貌には、胡乱な笑みが浮かび――
「こんな獣の檻にのこのこ入ってくる、君が悪いよ」