ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「これが、今できあがってる、受賞作品の仮ページ」

ウェブページをプリントアウトしたらしい紙をライアンがテーブルに広げると、ラムちゃんと南波さんが「うわぁ!」と飛びついた。

「素敵! 春の遠足っぽい感じですね?」
「可愛いっ!」

「ありがとう」
2人に笑顔を返したライアンは、「じゃあ撮影の当日についてなんだけど――」
と話し始めた。


まず撮影場所、入り時間、搬入方法を確認。
続いて撮影順や角度、スタイリング等の詳細について、全員に話をふり、意見を引き出しながら、さくさく話題をリードしていく。


へえ……って、ライアンを盗み見た。

雅樹から専門用語を挟んだ質問が飛んでも、迷うことなく返しているし、
その仕切りは淀みなく、自信にあふれてる。

田所さんみたいに、面白いジョークを飛ばして、ガンガン行くわけじゃない。
理詰めで引っ張る新条部長とも違うタイプだ。

彼自身は、どちらかというと聞き役に徹してる印象なんだけど。

ただ時折挟まれる質問や意見が、他の人とは違うって気がする。
口調はあくまでソフトなのに、内容は鋭く新しく、的を得ていて。
場がハッと引き締まるっていうか……

畑違いの分野だろうとなんだろうと、できる人はできるんだなって脱帽してしまった。

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