ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
話し合いは、ライアンのおかげで順調そのものに進んだ。
何もなかったみたいに平然と私にも話しかけてくるから、拍子抜けしちゃったくらい。
これでいい。
彼が元の調子を取り戻したってことは、ちゃんと食べて眠れるようになったってこと。つまりそれは、私のことを完全に吹っ切ったってことだ。
喜ばなきゃいけない。いけないのに……。
「今回は、南波さんにはスタイリングもお願いしちゃってるから大変だけど、こっちもできるだけフォローするから。無理はしないで」
「大丈夫です。わたしお料理もスタイリングも、どっちも好きだから嬉しいです」
「そう言ってもらえると助かるよ。ありがとう」
「はははいっ! がんばりますっ!」
頬を染めた彼女にもやっとしたものを感じてしまい、膝の上に目を落とした。
一瞬胸の奥に生まれたそれが、嫉妬だとわかってしまってるから、始末が悪い。
ほんと、情けないな――
「……さん、真杉さん?」
「はっ、ははいっ」
ししまった。
集中しなくちゃ。
「他に、確認しておきたいことはある?」
「えっと、そうですね……」
じっと注がれる視線に、一瞬ドキリとしてしまった自分を叱り飛ばす。
「撮影からウェブページアップまで時間があまりありませんけど、それは大丈夫ですか?」
「問題ないね。受賞者のコメントは取れてるし、レシピの確認作業も終わってる。あとは写真をはめ込むだけだから。他には?」
「ほ、他ですかっ……ええと」
新人みたいにいっぱいいっぱいになりながら、私はペラペラとプリントをめくった――