ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
はぁあああっ……
床にのめりこみそうな、重々しい息が漏れた。
ようやく終わった……
疲れた……
いや、ミーティング自体は、よかった。
漏れなく、話はまとまったし。
いろんな意見が聞けて、おもしろかった。
問題は、私自身。
彼の視線や言葉にいちいち反応してしまって、もうくたくただ。
さっさとここから退散しよう。
散らばった資料を手早くまとめて、カバンに突っ込んだ。
「南波さんて、この後どちらですかぁ?」
「んーとね、別の打ち合わせがあって、代々木まで行くの」
「あ、じゃあ方向同じだから、一緒にタクシー乗ってきません?」
「いいの?」
南波さんとラムちゃん、雅樹に続いて会議室から出ようとしたところで――
「真杉さん」
ビジネスライクな声に、呼び止められた。