ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「ちょっと打ち合わせたいことがあるから、残ってもらっていいかな」
「え、……?」
振り向いた先にあったのは、強い意志を秘めた翡翠色の眼差しで。
ビクン、と立ちすくんだ。
打ち合わせって……何?
「あ、了解でーす。じゃあ飛鳥さん、あたし先に会社戻ってますねー」
「真杉さん、お疲れ様でーす」
ラムちゃんと南波さんは、ウロウロと目を泳がせる私に気づくことなく、呑気に手を振り、出て行ってしまう。
雅樹だけは心配そうにこっちを見てくれたけど。
「大事な仕事の話なので」
“仕事の”をライアンに強調されて、しぶしぶ頷いた。
「……じゃあ、お先に。何かあったら連絡しろよ」
「あ、うん――」
待って、と引き留める間もなく。
パタン。
目の前で、ドアは閉まってしまった。