ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
叫びかけた私の頬へ、大きな手が伸び――さらにぐっと、後ろへ足を引いた私の背に、固い壁が触れた。
逃げ場を失ったことを知り、全身が強張る。
「そういうのを、怯えてる、って言うんだよ」
どこか寂しそうな口調で、彼がつぶやいた。
「ごめん」
……え?
“ごめん”?
「貴志から聞いたんだろ? 不安だったよね。フィアンセが、マフィアと関わりあるかもなんて。黙ってて、悪かった」
金糸のようなまつげを震わせ、苦し気に言う。
「婚約解消の件、了解したよ」
どく、んっ――……!