ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「新条さんに、お願いがあるんですが」

お腹が満たされ、ワインの酔いも程よく回った頃。
僕はようやく、今夜の目的を切り出した。

会いたいとナディアを介して伝えた時から、予想はしていたんだろう。
新条は驚くこともなく、「何かな」と静かな視線を上げた。

「来月から始まるIT戦略セミナーに、飛鳥を参加させていただきたいんです」

「IT戦略セミナー? ……あぁ、社内向けにそんなのがあったっけ」

飛鳥が勤める会社は、社員なら無料で受講可能なセミナーを定期開催している。
業務に関わりのあるものから、ワインなどの趣味の類まで、幅広いジャンルがそろっていて、社員には人気らしい。

「そこに真杉を参加させて……お前に何のメリットがあるんだ?」

「講師が僕なんです」
さらりと言うと。

「…………」
新条は絶句した。


「ほんとは別の人の予定だったんだけど、脅して奪ったのよね」
「人聞き悪いこと言うな。交渉して譲ってもらったんだ」
「そうとも言うわね。オブラート100枚くらい重ねればね~」
「うるさいぞ、ナディア」

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