ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「『ちょっと留守にします』って、これじゃ医務室の意味がないんじゃない?」
6畳ほどの、小ぢんまりした白い部屋。
簡易ベッドに私を寝かせたライアンは、呆れたようにデスク上の伝言メモを見下ろしていたんだけど。
「ちょっと待ってて」
さらりと言いおいて、出て行ってしまう。
どこ、行ったんだろう?
帰った? それとも……
もしかして、先生を探しに行った?
と思いついて、一旦横にした体を起こした。
ここの先生は、自由にあちこち歩き回る癖があって。
予約した時間以外で捕まえようとするのは、なかなか難しいのだ。
教えてあげないと、彼の時間を無駄にしてしまう。
と、靴を履いたところで――
ガラッと再びドアがスライドし、ライアンが頭をぶつけないように注意しながら入ってきた。
「寝てた方がいいよ?」
眉を下げながら言い、私に並ぶようにベッドへ腰かける。
「もう全然平気――ひゃっ!」
突然視界が真っ暗になり、ビクッと身体を固くした。
これは……
「冷たっ」
手のひら?