ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「……言ったのか、飛鳥さんにそれ」
「言ったよ。温泉は行ったことあるけどさ、オープンエアバスは経験なくて。しかも、完全プライベートなんだろう? 朝からアウトドアでイチャイチャって最高じゃ…………え? 何、どうしたの?」
「…………言ったのか、それも」
「言ったよ?」
こめかみを押さえて横をむいてしまった拓巳を覗き込む。
「え、何? まずかった?」
ペシッと軽い音がして、「Ouch!」自分の頭が彼にはたかれたことを知った。
なんだ、なんなんだよ! 痛いなぁ。
「『まずかった?』じゃないっ! そんなの思いっきり、ヤることしか考えてませんって言ってるようなものじゃねえか!」
「だってハネムーンだよ!? 目的なんてそれしかないだろ!?」
「ないのかよっ!」
「Calm down, calm down, guys!」と、ナディアの手が僕たちの間に差し込まれた。
「落ち着きなさいよ! たとえそうだとしても、よ。どこでもいいって言い方はないでしょう。ほんっと、男ってデリカシーないのね」
お前も男だけどな!
口に出かかったけど、血の雨が降りそうだから黙っておく。
代わりにふん、と腕を組んで後ろへ体重をかけた。
「ほんとに行きたかったんだよ。観光だったら、これからいくらだってチャンスはあるけど、ハネムーンは一生に一度のことだし。だから思い出になるような、と……」
一生に、一度? ん?
今、何か……きらりと……
「あぁ……」
やっと答えを見つけて、僕はゆっくりと腕を解いた。
これだ。間違いない。