甘い罠に囚われて
「家まで送る。乗って。」

またいつかの時みたいに私の家なんて知らないくせにこんなこと言うし。

「乗れない…」

「なんで?」

「なんでって…私とあなたは住む世界が違う。」

目の前に立つKAKERUの真っ直ぐな視線が痛い。

「なにそれ。じゃあ、俺が今の仕事辞めてそこのコンビニでマジでバイトしたらいい訳?あんたと同じ世界に住める訳?」

「ちょっと声が大きい…、」

何事かと周りの視線が集まり始めた。駄目だ…このままだとバレちゃう。いつもと変わらないニット帽にマスク姿でもやっぱりただならぬオーラが出ている気がしてならない。

「ごめん…行くね。」

掴まれた腕を振り払おうとするのに出来なくて困っていると少し離れた所で誰かがKAKERUじゃないかと言い出したのが聞こえた。

「ほら、騒ぎになると困るでしょ?」

「いいよ。」

「えっ…」

「俺、あんたとだったら騒ぎになってもいい。つーか、寧ろなりたい。こんなんだってーー」

ってニット帽を外そうとするから慌てて止める。

「分かった。車に乗るからここから離れましょう。」

とは言うものの、参ったな……

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