行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「さくら・・・」

波留斗は、自分の胸で眠る生まれたままの姿のさくらを胸に抱き、ゆっくりと頭を撫でる動作を繰り返していた。

出会ってからも、どんどん魅力を増すさくら。

mirayは、最早、作られたコスプレではなく、さくら自身だ。

出会ったときから惹かれていた。

西園寺家のお嬢様ではない、素顔のさくらに。

魅力を振り撒いて周囲を魅了していくさくらにヤキモキし、CMが放映されてからはどんどん自分から遠ざかって行くようで、落ち着かなかった。

目の前にさくらは存在しているのに、ちっとも自分を見てはいないように感じて、波留斗はいつものポーカーフェイスを張り付けることができなくなっていた。

悠紀斗や美憂、千歳の横やりも、波留斗をイライラさせた。

゛大事にしなよ?゛

さくらが波留斗に放った言葉は決定的な意味を示していた。

゛さくらが波留斗を男として見てはいない゛と。

だから、暴君系とかなんとか訳のわからないことを言うさくらの言葉を利用して、強引な態度に出てしまった。

やたら中性的だとは思ってはいたが、まさか未経験だとは思わなかった。

これまでの波留斗なら、ハジメテの女なんて鬱陶しいと感じていただろうが、今はただ純粋に喜びだけが心を占めていた。

゛さくらのハジメテの男になれた゛

それは想像以上に、独占欲を満たし、征服欲を掻き立てるものだった。

さくらは、見た目通り、しなやかな柳のように全てに順応していく才能と魅力の持ち主だ。

だから、ハジメテを捧げたからといって、波留斗のものになるとは限らないだろうし、波留斗に特別な感情を持ってはいないに違いない。

それは、このひと月余り、さくらを観察してきてよくわかっている。

だからこそ、今日、波留斗は勝負に出た。

そして、さくらはそれに乗った・・・。

「好きだ・・・さくら。覚悟しろよ」

眠るさくらのつむじにキスをして、波留斗はギュッとさくらを抱き締めると口角をあげてニヤリと微笑んだ。
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