行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「北王路望美さんが波留斗との縁談を断ってきたよ。どうやって説得したのか聞かせてもらいたいものだな」

「もう気がすんだでしょう。兄さん。僕の恋愛に口を挟むのはやめて頂きたい」

腕を解いた拓海は、ゆっくりとその場を離れていき、残りの四人もそれぞれの目的の場所に移動していった。

残された二人は人の少ない、会場の端へ移動した。

「望月副社長や美憂まで巻き込んで、いったい兄さんは何がしたいんですか?」

「北王路さんの件は、自分の手を汚さずに断る算段をつけたまでだ。波留斗がこの難題をどこまで自力で解決するかも見たかったしな」

横柄な兄の態度に、波留斗は溜め息をつく。

「これまでも、あなたが暴君だとは思ってましたが、ここまでとは・・・」

「波留斗は俺には勝てないんだからしょうがない。俺のおこぼれをあげようといってるんだ。ありがたく頂戴していればいいものを」

「おあいにく様です。間に合ってる」

悠紀斗は、波留斗の反抗的な態度に腹をたてる様子でもなく、興味深そうに波留斗を見つめていた。

「今日のmirayはイケメンバージョンなんだな。望美さんには全く興味がなかったから、BL好きとは知らなかった」

悠紀斗は、ゆっくりと会場の中央にいるmirayに目を向け歩き出した。

いつの間にか、北王路望美が会場に戻って来ている。

波留斗や拓海、mirayを交互に眺めては甘い溜め息を漏らしている。

「mirayさん」

後方から呼び掛けられ、mirayが振り向くと、すかさず3m近くまで望美が移動してくるのが見えた。

悠紀斗のあとを追った波留斗には嫌な予感しかしない。

振り返ったmirayを、突然、悠紀斗が抱き締めた・・・。

「お招きありがとうございます。君のお陰で南條ビバレッジも安泰だ」

BL目線の望美以外には、外国の男性達が親愛の情を示すようにだきあっているようにしか見えていない。

「兄さん、ここは外国ではないから」

微笑みながらやんわりと二人を引き離す波留斗。

「いやん、ライバル登場で修羅場?悠紀斗さんまでゲイなんて・・・、ああん、もう尊すぎて手を出せないわ」

悠紀斗は、この状況を利用して、まんまと自分も望美の対象外になった。

男装しているとはいえ、mirayいやさくらは女性だ。

今は誤解されても、mirayの性別がバレてしまえば波留斗も悠紀斗も女性を好きな事実は変わらないからだ。

「抜け目がありませんね」

「お誉め頂き光栄です」

微笑みながら睨み合うイケメン三人組の修羅場に、一番のご褒美を貰ったのは、ほかならぬ望美だったに違いない。


< 83 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop