行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「お母様、波留斗さんはずっと自分のせいで妹さんがお亡くなりになったと思って苦しんできたんです」

「どうして?何故そんな誤解を生じたの?」

オロオロとする優美子に、驚愕で言葉を失ってしまった波留斗に変わって、さくらは祖母の葬儀の日に波留斗が親戚の話を立ち聞きしたこと、更に兄から波留斗のせいだと聞かされていたことを話した。

「だから波留斗さんはいつも何かに悩んでいる様子で、家族にも遠慮をしていたのね・・・気づかなくてごめんなさい」

ポロポロと涙を流す優美子にさくらはそっと近づきハンカチを渡した。

「だけど母さん、僕を見るときはいつも切なそうだったし、何か言いたそうなのに我慢しているようだったよね・・・?」

ようやく顔をあげて優美子を見つめた波留斗の目にも涙が浮かんでいた。

「ちがうの、そうじゃないの。波留斗さんがベランダから落ちたのは私のせいだから・・・鍵を閉め忘れたのは私の責任と、事故の概要を調べに来た警察官にも言われたわ。・・・ルーちゃんに続いて波留斗さんまで失ってしまっていたらと思うと、あまりにも苦しくて、あなたに申し訳なくて、しばらくはあなたに正面からぶつかることができなかったの」

優美子はゆっくりと波留斗の元に近づくと

「波留斗さん、ずっと言われのない罪で悩ませて、苦しめてしまってごめんなさいね。情けなくて、鈍感なお母さんを許して・・・」

と呟いて、波留斗を抱きしめた。

「僕が・・・妹を殺したわけじゃないの・・・?」

「もちろん違うわ。それにあの時、たとえまだお腹にルーちゃんがいたとしても、私は迷わず波留斗さんを助けたわ。だって、私の大切な息子だもの」

「母さん・・・」

波留斗は物心ついてから初めて母の胸に抱かれ、声を殺して泣いた・・・。

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