行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
波留斗と優美子が、お互いのわだかまりを解いている間、さくらは優美子にお願いして、南條家の中庭を散策していた。

11月の風は、お昼時とはいえ少し冷たかった。

南條家の庭にも、庭師が丁寧に育てた四季咲きの薔薇が咲いている。

ハイブリッド系統のピース、黒バラのパパメイアンがしっとりと咲いていた。

他にもススキやパンパスグラスといった秋の草も効果的に植えられている。

さくらは、木製のドーム型のカゼボに腰かけると、ボンヤリと景色を眺めていた。

ともかく、波留斗と優美子のわだかまりが溶けて良かった。

心地よい風を頬に感じながら、さくらは、真っ青な空に浮かぶうろこ雲を見つめて目を閉じた。

「さくら」

うたた寝をしていたのだろうか?

さくらが目を開けると、目の前に波留斗の顔が迫っており思いの外、さくらはのけ反ってしまった。

「話、できた?」

「ああ、俺の知らないこともいろいろと教えてくれたよ。叔母さん達にもなんか誤解があったみたいだけど、ずいぶん前に誤解は解いてたらしい。知らぬは俺ばかりだったようだ」

そう言って、さくらの横に座った波留斗も、さくらと同じように瞳を閉じて深呼吸をした。

「・・・ありがとう。さくらのお陰で、なんだか生まれ変わった気分だ」

「私はきっかけを作っただけ。誘導尋問をしたわけでも、マインドコントロールしたわけでもない。お母様の選択肢は無数にあったはずだけど、素直に事実だけをお答えくださった。お母様の純粋さが導いた結果」

さくらは、帝王学の一貫として、大学では心理学とカウンセリング技術を学んだことがある。

相手をよく観察し、懐に入り込む手管。

さくらは、帝王になるべくして生まれたような臨機応変に対応できるリーダーシップの持ち主でもあった。

< 93 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop