もうひとりの極上御曹司
「妹の私より、まずは恋人の亜沙美さんでしょう……。いくら長い付き合いでも、そのうち見捨てられるよ。それでなくても亜沙美さんみたいに綺麗なアナウンサーなら男性から声をかけられることも多いはずだし」
亜沙美は容姿の美しさはもちろん子供の頃バレエをしていたせいで姿勢がよく、立ち姿もとても綺麗だ。
その一方で、勉強も欠かさず知識も豊富。
そして朗らかで気取らない性格が視聴者からの好感度も抜群。
そんな完璧な女性なら、駿平よりも素敵な男性から狙われてもおかしくない。
妹のことばかりを気にかけ恋人を優先しない駿平のどこがいいのか、亜沙美に一度聞いてみたいと千春は常々思っている。
どうしたものかとふと辺りを見回せば、緑に頭が上がらない駿平を、弁護士たちが面白そうに見ている。
緑に強く逆らえない駿平の困っている様子が面白くて仕方がないらしい。
能天気な緑がそんな周囲の視線に気づくわけもなく、彼女の背後に立つ警護兼秘書の吉見に「札幌のお店の予約は何時だったかしら。シャンパンを用意するように連絡しておいて。亜沙美ちゃんが好きな銘柄だと言えばわかるから」と楽し気に言っている。
緑は駿平を通じて知り合った亜沙美を気に入っていて、たびたび食事に連れ出している。
今日も亜沙美が仕事で北海道に行くと知った緑が、札幌でお気に入りのお店でおいしいものを食べましょうと強引に決めたのだ。
もちろん駿平も一緒に、だ。
どうしようかと決めかねている駿平に、千春は軽くため息を吐いた。
「週末なら空いてるから、一緒にハンバーグを食べに行こう。もし都合が合えば亜沙美さんも誘って。とにかく今日は札幌に行ってきて」
「週末……?」
千春の言葉に駿平ががピクリと体を揺らし、期待に満ちた表情を浮かべた。
その瞳はキラキラと輝き、千春は嫌な予感がした。