もうひとりの極上御曹司
「大丈夫だって言ってるだろ? 昨夜抱き潰して腰がダメになっただけだ。しばらくすれば歩けるようになる」
「し、愼哉さん、そんなこと言わないでください」
抱き潰したなどと言われ、千春は顔を真っ赤にして愼哉の胸を何度も叩く。
愼哉はギュッとしがみつく千春を愛し気に見つめたあと、すっと表情を引き締め緑と成市に視線を向けた。
「わかっただろう? 千春は俺が面倒を見るから余計なことはしないでくれ。千春を愛するのも守るのも俺だ」
堂々とそう言い放つと、愼哉は千春を大事に抱きかかえたまま背を向け、再び歩き出す。
親子のやり取りを聞きながらも素知らぬ振りを続けている使用人たちは、千春を宝物のように抱く愼哉の柔らかな笑顔に驚き、息を詰めた。
その場に取り残された緑と成市もまた、あまりにも露骨に千春を溺愛する愼哉の姿に言葉を失っていた。
とはいえやはり。
「愛するのも守るのも、私だって負けないんだから。絶対、千春ちゃんとふたりでランチに行くわ」
緑の復活は早かった。
そして。
結局その日足腰が立たなかった千春は泣く泣く大学を休んだ。
おまけに、木島愼哉の婚約者である千春の姿をキャッチしようとマスコミが騒ぎ立て、千春が大学に通えるようになったのはそれから一週間後だった。
たとえ大学であっても外に出したくない愼哉はその状況を楽しみ、それこそ毎晩意識を失うほど千春を抱き潰した。
当然、千春は木島家での朝食の席に、愼哉に抱き上げられて顔を出す日が続いた。
千春が愼哉を好きになってから十二年。
ようやく幸せな日々が始まった。
そしてそれから数年後。
愼哉の弟である悠生の前にも愛する女性・芹花が現れる。
悠生の結婚は、愼哉と千春の未来にも影響を与えるのだが……。
どんな未来になろうとも、愼哉と千春は互いを溺愛する幸せな夫婦として笑い合うのだ。
完


