桜の下で会いましょう
入内しないのは、夏の右大将との仲があるからだと、思われてしまったら、自分はこれから先、どう生きていけばよいのだろうか。


「……帝の事を、想われているのか?」

依楼葉は、振り返った。

「知っているのですか?」

「ええ。前から。」

依楼葉と橘厚弘は、顔を合わせた。


「知っていながら、このような事をなさったのですか?」

「お二人の仲がどうであろうと、これからの私達には関係ない。」

依楼葉は、近くに打ち捨てられた衣を掴むと、橘厚弘に向けて投げた。

「出て行って下さい!」

だが橘厚弘は、冷静に衣を剥ぐ。

「落ち着いて下さい。人が来ますよ。」

「来てもよい。帝は、このような噂、お信じにはならぬ!」

依楼葉が、顔を背けたその時だ。


橘厚弘はそれを利用して、依楼葉を押し倒した。

「右大将殿……」

「そこまで信じ合おうているのなら、なぜ入内せぬ。」

「あなた様には、関係ない事!」
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