桜の下で会いましょう
そんな事を太政大臣から言われた帝は、何かと依楼葉の事を、チラチラと見るようになった。

「どうか、なさいましたか。」

「いや……」

依楼葉が尋ねても、黙ってしまう。

不思議に思うのは、依楼葉ばかりだ。


そして季節は冬を終え、春を迎えようとしていた。

「また今年も、桜の季節がやってくるのですね。」

庭の桜の木を見て、嬉しそうに話す依楼葉。

「……尚侍は、桜の木が好きなのだね。」

「はい。」

帝は、立ち上がると依楼葉の側に座った。


「……太政大臣殿の隠居を、お止めしたのは尚侍だそうだね。」

「はい。」

「私でもできなかった事を、よくやってくれた。」

「恐れ多いお言葉でございます。」

依楼葉は、帝に向かって頭を下げようと、少しだけ体をずらした。


その時だった。

「尚侍。」

依楼葉の手を、帝がそっと握った。

「……主上?」
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